タイ語の発音2 声調のはなし
blog No.003 投稿日:2020.05.03/追加:2020.05.24
この記事の内容
通じるタイ語を身に着けるには、何はさておき発音が大切です。日本語ネイティブにとって苦手な発音のうち、今回は、5つある音の高低のパターン(声調)について見ていきます。
・マイ マイ マイ マイ チャイ マイ?
・5つの声調と発音記号
・正しい声調はタイ語の第一歩
・今日のことわざ
※以下の文中にはタイ文字が使われていますが、読めなくても全く問題なく理解できます。
タイ語の発音2 声調のはなし
マイ マイ マイ マイ チャイ マイ?
マイマイマイ???...何のことでしょう?
実は「新しい絹は燃えないですよね?」という意味です。カタカナだと同じ「マイ」でも、発音の高低によって別の単語として理解するわけです。この音の高低のことを「声調(せいちょう、英語で tone トーン)」とよびます。タイ語にはなんと5つもの声調があります。
冒頭のマイマイマイ...ですが、タイ語ではこう書きます。([ ]内は発音を表す記号。あとで説明します。)
ไหมใหม่ไม่ไหม้ใช่ไหม [măi mài mâi mâi châi mái]
(最後の mai は、文字上は măi ですが、通常は mái と発音します。)
ちなみにそれぞれの単語の意味はこうなります。
・ไหม [măi] 「絹」という意味の名詞
・ใหม่ [mài] 「新しい」という意味の形容詞。タイ語は原則として「被修飾語+修飾語」の順に並べます。スペイン語やフランス語などラテン系の言語と同じですね。
・ไม่ [mâi] 後に続く動詞や形容詞を否定する語句。
・ไหม้ [mâi] 「燃える」という意味の動詞。文字は違いますが、上の ไม่ と同じ発音です。
・ใช่ไหม [châi mái] 文末に置いて「そうですよね?」と確認、念押しの疑問文をつくります。
タイ文字の上についている ่ ้ は声調符号といいます。[ ]内の発音記号についている ̀ ̂ ́ ̆ が声調を表します。タイ文字については別の機会に譲ることにして、次にアルファベットの記号と声調について見てみましょう。
5つの声調と発音記号
下の図がタイ語の5つの声調を示したものです。3が地声の高さ、5が高い音、1が低い音を表しますが、目安程度で理解してください。声調と記号の関係もまとめておきました。ぜひ実際に発音を聞いてほしいです。ネットを探せばたくさん出てくるはずです。
図の 番号 | イメージ ・=地声の高さ | 声調名 | 声調名 (タイ式) | 発音 記号 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
⓪ | ・→ | 平声 (へいせい) | 普通声調 | なし | 地声の高さ、最も楽な高さで平らに |
① | ・→ | 低声 (ていせい) | 第1声調 | ̀ | 低く抑えて平らに |
② | ・↘ | 下声 (かせい) | 第2声調 | ̂ | 高い音から落とすように 「さあ、行こう!」と言う時の「さあ」に近い |
③ | ・→ | 高声 (こうせい) | 第3声調 | ́ | やや高い音からさらに鋭く上げる 驚いて「ええーっ?本当?」と言う時の「ええ」に近い |
④ | ・↗ | 上声 (じょうせい) | 第4声調 | ̆ | 低い音から尻上がりに上げていく。気持ち長めに発音する 嫌になって「ええーっ、まだ歩くの?」と言う時の「ええ」に近い |
この表をダウンロード(PDF,78KB)
(注1)声調名(平声、低声など)は決まった言い方がなく、学習書によって違います。また発音記号はどの学習書もほぼ共通ですが、アルファベットの綴りも含めて外国人用なので、タイでは通用しない可能性が高いです。
(注2)声調言語としては中国語が有名で、北京語を基準とする中国の標準語では4つの声調(四声)があります。すでに勉強された方もいるかもしれません。私も中国語を先に学習したので、声調そのものには違和感はありませんでしたが、タイ語とは高低のパターンや発音記号が違います。
正しい声調はタイ語の第一歩
実は先ほど紹介したマイマイマイ・・・には、最初の ไหม [măi](絹)が ไม้ [mái/実際は máai と発音される](木)に置き換わっているという別バージョンがあります。
ไหมใหม่ไม่ไหม้ใช่ไหม [măi mài mâi mâi châi mái/マイ マイ マイ マイ チャイマイ]
「新しい絹は燃えないですよね?」
ไม้ใหม่ไม่ไหม้ใช่ไหม [máai mài mâi mâi châi mái/マーイ マイ マイ マイ チャイマイ]
「新しい木は燃えないですよね?」
blog002で紹介した「遠い」と「近い」を見てみましょう。
ใกล้ [klâi/クライ] 「近い」 下声(第2声調)で発音します。
ไกล [klai/クライ] 「遠い」 平声(普通声調)で発音します。
声調の大切さがおわかりいただけましたか。それでは、早速「トムヤムクン」を注文してみましょう。
ต้มยำกุ้ง [tôm yam kûŋ]
トムは下声(第2声調)で、ヤムは平声(普通声調)、最後のクンはまた下声(第2声調)。少し大げさに声調をつけてみましょう。カタカナ読みの「トムヤムクン」とはかなり違う発音になるはずです。
無事注文できましたか。正しく声調をつければ、かなり通じるのではと思います。ただし、まだ説明できていない発音がありますので、通じなくても心配しないでください。少しずつ、タイ語の発音を身に着けていきましょう。
今日のことわざ
หนีเสือปะจระเข้
[nĭi sʉ̆a pàʔ cɔɔrakhêe /二― スア パッ チョーラケー]
日本語訳:虎から逃げてワニに出会う。
一難去ってまた一難という意味です。日本語だと「前門の虎、後門の狼」ですが、タイではワニなんですね。
ちなみに声調の話をすれば、 เสือ [sʉ̆a/スア](虎) を เสื้อ [sʉ̂a/スア] と言えば「服」、เสื่อ [sʉ̀a/スア] なら「ござ」になってしまいます。
[ 参考文献 ] 冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』養徳社、1990年; 河部利夫『基礎タイ語』大学書林、1982年;