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タイ文字講座 STEP1 タイ文字のしくみ
blog No.011  投稿日:2020.08.15

タイ語を楽しく、しかも本格的に学習するサイトです。タイ語ってどんなことば? 難しいの? 「コツ」は何?……こんな疑問をお持ちの方に、発音の要領、タイ文字の読み書き、簡単な会話や文法などわかりやすく紹介しています。タイ語に関する様々な雑学をはじめ、タイの歴史や文化に関する幅広い情報、タイ旅行のノウハウや経験談、タイのニュースなど、タイやタイ語への理解が深まる内容も盛りだくさんです。

この記事の内容

 複雑怪奇に見えて取っ付きにくいけど、どことなくユーモラス。このタイ文字の基本的な読み書きができるようになりましょう。タイ文字の習得はタイ語学習の大きな「ヤマ」です。
 第1回目はまず、タイ文字のおおまかなしくみを紹介します。

そもそもタイ文字の習得は必要か?
しくみ(1) 子音字と母音符号で音を表す
しくみ(2) 音節単位で理解する
その他の特徴
今日のことわざ

STEP1 タイ文字のしくみ

そもそもタイ文字の習得は必要か?

 結論から言えば、「ぜひとも習得すべき」です。
 その最大の理由は、
 タイ文字は表音文字なので、文字を見れば正確な発音ができる
ということに尽きると思います。日本語ネイティブにとって、タイ語の学習は「発音に始まり、発音に終わる」と言っていいほど、発音の習得は難しいものです。(詳細はblog002をご覧ください。)文字の理解は、間違いなくその手助けになります。
 以前、中北部のカムペーンペット กำแพงเพชร [kamphɛɛŋ phét] という古都を訪ねた時のことです。ホテルの受付のお姉さんが私に「文字は読めるの?」と聞くので「読めますよ」と答えると、何やらメモ用紙に書いて読んでごらんというふうに渡してきました。簡単な文なのですぐ読めましたが、このテストに合格した私に彼女はこう話してきました。「私の知り合いに、ピッサヌロークに住んでいる日本人がいるの。何年も住んでいるのに少しもタイ語がうまくならないんです。字が読めないから……。」
 文字を見ずに覚えるとどうしても自分よがりの発音になりがちです。子どもは字を覚える前にことばを覚えるものだから、タイ文字の勉強もいらないという人もいますが、それは言語学習能力が最も高い子どもだから言えることです。その時期を過ぎてしまったら、やはり文字を利用したほうが近道だと思います。
 タイ文字を実用レベルで読み書きするにはかなりの学習と熟練が必要になりますが、単純なものならすぐできるようになります。そして少しでも読み書きができると、タイ語の発音や単語の習得に大きなプラスになります。 

train timetable train timetable

ある駅の時刻表
少し地方へ行けばこんな風にタイ語オンリーです

しくみ(1) 子音字と母音符号で音を表す

script01 script01

【図1】

 【図1】はタイ文字の基本的しくみを示したものです。青字の部分は子音を表す「子音字」赤字の部分は母音を表す「母音符号」です。この2つを組み合わせて、実際の発音を表すわけです。
 ①~⑤はすべて子音字 ม が使われています。これは [m/ マ行] の子音を表す文字です。
 ①は子音字 ม に [aa/ アー] を示す母音符号 -า がついて [maa/ マー] と発音します。(- は子音字の位置を示します。)つまり、ม [m]+ -า [aa/ アー] → มา [maa/ マー]  意味:「来る」
 同じように、
② ม [m]+ -ี [ii/ イー] → มี [mii/ ミー] 「ある、持っている」
③ ม [m]+ -ู [uu/ ウー] → มู [muu/ ムー] (意味のある単語はない)
④ ม [m]+ แ- [ɛɛ/ エー] → แม [mɛɛ/ メー] (意味のある単語はない)
⑤ ม [m]+ เ-า [au/ アウ(オ)] → เมา [mau/ マウ(オ)]「酔う」(アクセントが a にあるので、u は軽く発音する。そのためウと聞こえたりオと聞こえたりする)
 母音符号の位置に注目してください。①のように子音字の右につくものばかりでなく、子音字の上、下、左についたりします。⑤のように子音字をサンドイッチするような母音符号もあります。どの位置につくかは、母音符号ごとに決まっています。
 あとは、子音字と母音符号を覚えれば、とりあえず読めるようになります。ちなみに、子音字は44文字(廃字が2文字あるので、実際には42文字)あります。母音符号は、およそ30の母音に対応していますが、⑤のように符号の組み合わせも多いので、符号の種類は15程度です。ヨーロッパ語のアルファベットよりは多いですが、数千も覚えなければならない漢字よりは、はるかに簡単です。

しくみ(2) 音節単位で理解する

script02 script02

【図2】

 【図2】はタイ語の単語のいくつかをタイ文字で表記したものです。【図1】と同様に、青字の部分は子音を表す「子音字」赤字の部分は母音を表す「母音符号」です。さらに紫色の部分は声調を示す記号です。
 ⑦から説明します。⑦は【図1】の③ มู [muu/ ムー] のあとに、子音字 ล [l/ ラ行] がついています。子音字 ล は音節の末尾では [-n] と読みますので、全体では มูล [muun/ ムーン] と発音します。このように子音字には、音節の先頭に来た時の音(頭子音)と、音節の末尾に置かれた時の音(末子音)の2種類の発音を表します。頭子音と末子音は容易に推測される場合もありますが、そうでない場合もあります。つまり⑦は มู [muu] + ล [-n] → มูล [muun/ ムーン] 意味:「根本、根拠、基礎」
 同じように、
 ⑧ แม [mɛɛ/ メー] + ง [-ŋ] → แมง [mɛɛŋ/ メーン] 意味:「蜘蛛、サソリ」
 ⑥も同様ですが、声調が変わることに注意してください。
 ⑥ มา [maa] + ก [-k] → มาก [mâak/ マーク]  意味:「たくさんの」
 また⑨のように声調符号をつけることもあります。
 ⑨ แม่ [mɛ̂ɛ/ メー] 意味:「母」  声調の規則は結構難解ですので、別の機会に説明します。
 このように、末子音や声調も含め、音節(子音と母音の組み合わせからなる一連の音)単位で文字を読めるようになることが重要です。

その他の特徴

 以上述べたこと以外で、タイ文字表記の特徴をまとめておきました。
・大文字・小文字の区別はありません。
・アラビア文字のように語頭・語中・語尾で形が変わることはありません。
・英語のアルファベットのような筆記体はありませんが、活字にはさまざまなフォントがあって、覚えたばかりの人には読めないようなフォントもあります。これは慣れるしかありません。
・英語のように、単語ごと分かち書きはしません。句読点もありません。文の切れ目などはスペースをあけます。
 私は、この分かち書きしない習慣が最も困りました。ずらっと文字が並んでいると、どこが単語の切れ目かわからなくなります。すると辞書も引けません。とにかく多くの単語に慣れ親しまないと、長い文の解読は骨が折れます。

 このように、タイ文字の習得には一筋縄でいかないところも多々あります。タイ語をかじっても途中でやめてしまう人が多いのは、タイ文字というハードルがあるのかもしれません。たしかに一定以上のレベルに達するには努力が必要ですが、基本的な単語や短い文章が少し読めるだけでも、タイ語学習の大きな武器になること請け合いです。少しずつ、上達を目指して頑張っていきましょう。 

thai script example thai script example

タイ語はこんなふうに文字がずらずらと並びます。単語の切れ目を探すのが大変かも

 

今日のことわざ

ปอกกล้วยเข้าปาก

[pɔ̀ɔk klûai khâu pàak / ポーク クルアイ カーオ パーク]
日本語訳:バナナの皮をむいて口に入れる

 タイでバナナ กล้วย [klûai/ クルアイ] はとても身近な「食べ物」です。たくさんの種類があって、生で食べるほか、バナナチップにしたり、路上の屋台では焼き芋のよう焼かれていたりしますので、単純に「果物」と言いきれないところもあります。
 いずれにしろ、バナナの皮をむいて口に入れるのはたやすいことですね。このことわざは、困難なく簡単にできることを意味します。日本語なら「朝飯前」といったところでしょうか。
 タイ文字の習得は残念ながら「バナナの皮をむいて口に入れる」ほど簡単ではないかもしれませんが、頑張っていきましょう

[ 参考文献 ] 冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』養徳社、河部利夫『基礎タイ語』大学書林、1982年、岩城雄次郎・斉藤スワニー『タイ語ことわざ用法辞典』大学書林、1998年/p>

 

I AM...

self portrait

1963年、愛知県生まれ。男性
1982年、初めてタイを旅行。以後、50数回(短期のトランジットを除く)タイを訪問
2011年度通訳案内士試験(タイ語)合格【観光庁・国家資格】
2012年、総合旅行業務取扱管理者試験合格【観光庁・国家資格】