HOME 前の記事 次の記事

旅ときどき単語2 県名で知る単語(2)
blog No.027   投稿日:2022.3.21

タイ語を楽しく、しかも本格的に学習するサイトです。タイ語ってどんなことば? 難しいの? 「コツ」は何?……こんな疑問をお持ちの方に、発音の要領、タイ文字の読み書き、簡単な会話や文法などわかりやすく紹介しています。タイ語に関する様々な雑学をはじめ、タイの歴史や文化に関する幅広い情報、タイ旅行のノウハウや経験談、タイのニュースなど、タイやタイ語への理解が深まる内容も盛りだくさんです。

この記事の内容

 どの言語でも語彙力が大切なのは論を待ちません。とくにタイ語は、名詞の性とか動詞の活用といった込み入った文法事項がない分、単語力がより一層重要になります。とは言っても、単語帳とにらめっこしていてもなかなか身につきませんね。
 そこでこのブログでは、タイの旅行を楽しみながら単語を増やして行くという、夢のような勉強法に(あまり自信はないのですが)チャレンジしてみたいと思います。

タイの県名
「ターニー」 ธานี がつく5県
ธานี [thaanii/ターニー]のついた県名の意味
「ラート」または「ラーチャ」 ราช
「シー」 ศรี
「ペット」または「ペッチャ」 เพชร
「サムット」 สมุทร
今日のことわざ

旅ときどき単語2 県名で知る単語(2)

タイの県名

 タイの地図を眺めながら、77の県名(バンコク都を含む。県庁所在都市名とすべて同じなので、全国77都市とも言えます。)に多く使われている語を並べてみました。( )は該当県の数です。

  • ブリー บุรี(12)
  • ナコーン นคร(9)
  • ターニー ธานี(5)
  • ラーチャまたはラート ราช(4)
  • シー ศรี(3)
  • ペット เพชร(3)
  • サムット สมุทร(3)
 前回は、ブリーとナコーンを紹介しました。今回は第2回目です。ターニー以下を紹介します。

▼地図をクリックすると、拡大・縮小します。

タイの地域区分と県名地図
行ったことがある県名を青色、それ以外を灰色で示してみました
地域名は、凡例の上から、北部・東北部・東部・中部・南部です。
地図は、https://www.freemap.jp/ からダウンロードしたものを改変しています

「ターニー」 ธานี がつく5県

 ธานี [thaanii/ターニー]がつく県・都市名は、次の5つになります。

   
県名(タイ語)発音日本語ひとこと紹介
1อุดรธานีʔùdɔɔn thaaniiウドーンターニー世界遺産のバーンチエン遺跡 โบราณสถานบ้านเชียง [booraan sathăan bâan chiaŋ]があります。
2อุบลราชธานีʔùbon râatcháthaaniiウボンラーチャターニーラオス・カンボディア両国と接する、タイ最東端の県です。
3ปทุมธานีpàthum thaaniiパトゥムターニーバンコク都の北に接した小さな県。ドーンムアン空港の北にある大きな町 รังสิต [raŋsìt/ランシット] もこの県にあります。
4อุทัยธานีʔùthai thaaniiウタイターニー西部は世界自然遺産のトゥンヤイ・フアイカーケン野生生物保護区 ทุ่งใหญ่-ห้วยขาแข้ง [thûŋyài-hûai khăa khɛ̂ŋ] 、東部は稲作地帯です。
5สุราษฎร์ธานีsùrâat thaaiiスラートターニー南タイ最大面積の県。ランブータン(เงาะ [ŋɔ́ʔ/ゴ]、この発音難しいです)の産地として有名です。サムイ島もこの県に属します。

ธานี [thaanii/ターニー]の意味と語源
 これもパーリ・サンスクリット語起源の単語で、町や都市を意味します。インドに行った方なら、Rajdhani Express(ラージダーニー急行)に乗ったことがあるかもしれません。Rajdhani とは、Raj「王」と dhani「都市」で「首都」「王都」の意味です。タイ語では、อุบลราชธานี [ʔùbon râatcháthaanii/ウボンラーチャターニー] の ราชธานี [râatcháthaanii] に相当します。

ธานี [thaanii/ターニー]のついた県名の意味

1 อุดรธานี [ʔùdɔɔn thaanii/ウドーンターニー]北の都
 「北」は普通語では ทิศเหนือ [thít nʉ̆a/ティット ヌア] と言いますが、文語的にはパーリ・サンスクリット語の uttara が起源の อุดร [ʔùdɔɔn] を使うことがあります。อุตร [ʔùttara] も異形同語(同じ語源だが形が少し異なる語という意味)で、タイ北部の อุตรดิตถ์ [ʔùttaradìt/ウッタラディット] 県は「北の港」の意味です。
 これ以外にも、方角の文語的言い方をいくつかあげておきます。日本語―普通語―文語の順です。

  • 北―อุดร [ʔùdɔɔn/ウドーン]
  • 北東―อีสาน [ʔiisăan/イーサーン]
     東北タイのことをイーサーンというのは一般的ですね。
  • 南東―อาคเนย์ [ʔaakhánee/アーカネー]
     東南アジアを เอเซียอาคเนย์ [ʔeesia ʔaakhánee/エーシア アーカネー] と言ったりします。
  • 南―ทักษิณ [tháksĭn/タックシン]
  • 北西―พายัพ [phaayáp/パーヤップ]
     チエンマイを中心とするタイ北部をタイ語ではパーヤップということがあります。

2 อุบลราชธานี [ʔùbon râatchathaanii/ウボンラーチャターニー]睡蓮の王都
3 ปทุมธานี [pàthum thaanii/パトゥムターニー]蓮の都

lotus&waterlily lotus&waterlily

左:蓮。英語名 lotus。葉が水面より突き出ます。@マカオ
右:睡蓮。英語名 water lily。葉は水面に浮きます。@ラムプーン

 華麗な花を水上に咲かせる蓮(はす)と睡蓮(すいれん)。しばしば混同されますが、全く別の植物だそうです。タイ語では、両方まとめて บัว [bua/ブア] と言いますが、次のように区別します。最初が普通語、次がパーリ・サンスクリット語起源の文語です。
・蓮・・・บัวหลวง [bua lŭaŋ/ブア ルアン] 、ปทุม [pàthum/パトゥム]
・睡蓮・・・บัวสาย [bua săai/ブア サーイ] 、อุบล [ʔùbon/ウボン]
 もちろん、もっと細かく花の色や品種で区別する語や、パーリ・サンスクリット語起源で蓮や睡蓮を表す語はたくさんあります。

5 สุราษฎร์ธานี [sùrâat thaanii/スラートターニー]善良な人々の都
 ราษฎร์ [râat/ラート] または ราษฎร [râatsàdɔɔn/ラーッサドーン] は「人民・民衆」の意味です。ผู้แทนราษฎร [phûu thɛɛn râatsàdɔɔn/プー テェーン ラーッサドーン] は、ผู้ [phûu]「人」+ แทน [thɛɛn]「~の代わりに」+ ราษฎร [râatsàdɔɔn] なので、全体で「人民代表」「代議士」という意味になります。
 最初の สุ [sùʔ/ス] は、「よい」「美しい」などの意味を付加する接頭辞なので、全体で「善良な人々の都」となります。

 

「ラート」または「ラーチャ」 ราช

 ราช [râat(cháʔ)/ラート(ラーチャ)]がつく県は4つあります。いずれも、すでに他の語がつく県で紹介済みです。

   
県名(タイ語)発音日本語
1นครราชสีมาnakhɔɔn râatchásĭimaaナコーンラーチャシーマー
2อุบลราชธานีʔùbon râatcháthaaniiウボンラーチャターニー
3ราชบุรีrâatchá burii
(râat burii)
ラーチャブリー
(ラートブリー)
4นครศรีธรรมราชnakhɔɔn sĭi thammarâatナコーンシー タムマラート

ราชบุรี ราชบุรี

ワット マハタート @ ราชบุรี(ラーチャブリー)  
寺院の案内看板によれば、10-11世紀のドヴァーラヴァティー時代に創建され、その後、この辺りを支配したクメール帝国の様式に作り替えられたといいます。
境内を囲むラテライトの壁には、瞑想する仏陀のレリーフがずらり並んでいました。(2007年8月訪問)

ราช [râat(chá)/ラート(ラーチャ)]の意味と語源
 パーリ・サンスクリット語 raja 「王」がタイ語に入ったことばです。 raja は、例えばマハラジャ(「偉大な王」の意味)とかラージプート(「王子」の意味)とか、割とよく知られているのではないでしょうか。

ราช [râat(chá)/ラート(ラーチャ)]のついた県名の意味
 繰り返しになりますが、おもなものを簡単にまとめておきます。
 ・2 อุบลราชธานี [ʔùbon râatchaáthaanii]睡蓮の王都
 ・3 ราชบุรี [râatchá burii]または[râat burii]王の町
 ・4 นครศรีธรรมราช [nakhɔɔn sĭi thammarâat]栄(は)えある仏陀の都

「シー」 ศรี

ศรี [sĭi/シー]は次の3県・都市に使われています。

   
県名(タイ語)発音日本語ひとこと紹介
1ศรีสะเกษsĭi sakèetシーサケートカンボディアとの国境にカオプラウィハーン遺跡 ปราสาทเขาพระวิหาร [prasàat khău phrá wíhăan]があります。
2พระนครศรีอยุธยาphrá nakhɔɔn sĭi ayúthayaaプラナコーンシー アユッタヤーかつての王都アユッタヤーです。
3นครศรีธรรมราชnakhɔɔn sĭi thammarâatナコーンシー タムマラート南タイの中心として栄えてきた古都です。

เขาพระวิหาร เขาพระวิหาร

カオプラウィハーン遺跡 @カンボディア(タイ・シーサケート県に隣接)
9~12世紀、クメール帝国が建設したヒンドゥー寺院(のち、上座部仏教の寺院)

 タイとカンボディアの国境の断崖上に位置し、帰属をめぐる争いが続きましたが、1962年、国際司法裁判所の判決でカンボディア領となりました。したがって、タイ側からは国境を越えてカンボディアに一時入国することになります。
 4つの楼閣がおよそ800mの直線状に並ぶ壮大な遺跡でした。第4楼閣の先はすぐ高さ500m余りの断崖が落ち込んでいて、赤茶色の土と疎林が続くカンボディア平原を見下ろすことができます。
 当時はまだ、カンボディアの内戦が終わって数年しか経っておらず、否が応でも戦争の傷跡が目立ちました。無数の銃弾の跡が残る石壁、第4楼閣の入口で線香を売っていた片足のない若い男性、残された高射砲やトーチカ。この辺りは、最後まで抵抗していたポル=ポト派の陣地だったようです。通路を外れた所には、ドクロマークと「危険!! 地雷!!」と書かれた赤い看板が立っています。なんと私たちが訪れた2日後、カンボディア人の青年観光客が地雷を踏んで重態に陥ったという新聞記事を目にしました。(2003年12月訪問)

付記 その後、両国間の関係が悪化し、ここの国境は閉鎖され、武力衝突も起きました。現在もタイ側からアクセスできない可能性が高いようです。

ศรี [sĭi/シー] の意味と語源
 接頭辞的に使われ、「吉祥」「光明」「美」「繁栄」などを意味します。パーリ・サンスクリット語起源です。

ศรี [sĭi/シー] のついた県名の意味
 やはり繰り返しになりますが、おもなものを紹介しておきます。
 ・2 พระนครศรีอยุธยา [phrá nakhɔɔn sĭi ʔàyútthayaa] 栄(は)えある首都アユッタヤー
 ・3 นครศรีธรรมราช [nakhɔɔn sĭi thammarâat]栄(は)えある仏陀の都

「ペット」または「ペッチャ」 เพชร

เพชร [phét(cháʔ)/ペット(ペッチャ)]は次の3県・都市に使われています。

   
県名(タイ語)発音日本語ひとこと紹介
1กำแพงเพชรkamphɛɛŋ phétカムペェーンペット県都の史跡公園はスコータイと同様、世界遺産に登録されています。
2เพชรบูรณ์phétchá buunペッチャブーン北部の県で、中央部と東北部に接しています。タイ有数のトウモロコシ産地だそうです。
3เพชรบุรีphét(chá) buriiペッブリー(ペッチャブリー)県都にはアユタヤ時代からの歴史を感じさせる寺院が点在しています。

กำแพงเพชร กำแพงเพชร

ワット=プラケーオ @カムペェーンペット

 カムペェーンペットは世界遺産のある町ですが、観光客は少なく、のどかな田舎町でした。昼ごろホテルへ帰ると、ちょっとうれしいことがありました。実はその朝、手を滑らせて部屋のコップを割ってしまったので、20バーツ札を置いて来たのですが、帰ってくると新しいコップと「お釣り」なのでしょうか、10バーツ硬貨が置いてありました。(2001年7月訪問)

เพชร [phét(chá)/ペット(ペッチャ)]の意味と語源
 パーリ・サンスクリット語起源の語で、「ダイヤモンド・金剛石」「ダイヤのように硬い」という意味です。

เพชร [phét(chá)/ペット(ペッチャ)]のついた県名の意味
 おもなものを紹介しておきます。

・1 กำแพงเพชร [kamphɛɛŋ phét] ダイヤモンドの城壁
 กำแพง [kamphɛɛŋ/カムペェーン] は「壁」「城壁」という意味です。ビルマの攻撃から王都スコータイを守るための城塞都市として建設されたため、頑丈な城壁がつくられました。
・3 เพชรบุรี [phét(chá) burii]ダイヤモンドの町

 

「サムット」 สมุทร

 สมุทร [samùt(*sàmùt)/サムット]は次の3県・都市に使われています。

*タイ語の発音について・・・( )内が本来の声調ですが、通常は簡略的に発音しますので、そのように表記しました。これに関する詳しい説明や、タイ文字の発音体系の詳細を知りたい方は、blog021 をご覧ください。

   
県名(タイ語)発音日本語ひとこと紹介
1สมุทรปราการsamùt praakaanサムット プラーカーンチャオプラヤー川の河口にあたるので、県都の通称は ปากน้ำ [pàak náam/パークナーム]、スワンナプーム空港もこの県内です。
2สมุทรสงครามsamùt sŏŋkhraamサムット ソンクラーム面積最小の県。メークローン川河口に位置し、県都の通称は แม่กลอง [mɛ̂ɛ klɔɔŋ/メークローン] です。列車が通るたび日除け傘をたたむ市場があります。
3สมุทรสาครsamùt săakhɔɔnサムット サーコーンバンコクの南西に隣接する県で、県都は通称 มหาชัย [mahăachai/マハーチャイ] と呼ばれます。

แม่กลอง แม่กลอง

ตลาดร่มหุบ [talàat rômhùp/タラート ロムフプ](傘閉じ市場) @サムットソンクラーム

 1輌編成の列車が警笛を鳴らしながら速度をぐんと落とします。有名な「傘閉じ市場」ตลาดร่มหุบ [talàat rômhùp] に近づいたようです。ตลาด [talàat]「市場」+ร่ม [rôm]「傘」「陰」+หุบ [hùp]「(傘や口を)閉じる」で「傘閉じ市場」という意味になります。ちなみに「傘を閉じる」は、หุบร่ม [hùp rôm]、「傘を開く・広げる」は、กางร่ม [kaaŋ rôm] と言います。(タイ語の語順は、動詞+目的語です。)
 車窓から見ていると、名前の通り日よけの傘を閉じる人もいますが、多くは、線路に向かって斜めに立てたつっかい棒を直立させることで屋根代わりの覆いを持ち上げ、列車を通しています。この方が手間がかかりません。
 終点のメークローン駅も市場に飲み込まれています。そこを抜けてソーンテーウに乗りこみ、河口のドーンホイロート ดอนหอยหลอด [dɔɔn hɔ̆i lɔ̀ɔt] に行くと、海鮮食堂がずらり。新鮮なエビやホイロート(地名にもなっている名物の貝。名前の通り細長い。หอย [hɔ̆i]「貝」+หลอด [lɔ̀ɔt]「管」 )を食べた後、屋台でカブトガニの卵が入ったホーモック(魚のすり身の蒸し物)を見つけました。カブトガニの卵はちょっと生臭く、プチプチした食感でした。(2009年5月訪問)

สมุทร [samùt/サムット]の意味と語源
 サンスクリット語 samdra が語源で「海」「深海」という意味です。3県とも海に面しています。ちなみに「太平洋」は、頭に มหา [mahăa]「大きな、偉大な」をつけ、さらに英語の Pacific Ocean から、มหาสมุทรแปซิฟิก [mahăa samùt pɛɛsifík/マハーサムット ペェースィフィク] といいます。

 

สมุทร [samùt/サムット]のついた県名の意味

・1 สมุทรปราการ [samùt praakaan] 海の防壁
 ปราการ [praakaan] は「防壁」「防塁」という意味です。首都バンコクを守備するため、チャオプラヤー川の河口付近には、19世紀につくられた防塁が残っています。
・2 สมุทรสงคราม [samùt sŏŋkhraam] 海の戦争
 สงคราม [sŏŋkhraam] は「戦争」です。

今日のことわざ

หน้าเนื้อใจเสือ

[nâa nʉ́a cai sʉ̆a / ナー ヌア チャイ スア]
日本語訳:鹿の顔、虎の心

 一般的には鹿は กวาง [kwaaŋ/クワーン] と言います。この言い回しに登場する เนื้อ [nʉ́a/ヌア] も「鹿」と訳しましたが、少し違う種の動物です。英語名は hog deer、和名はわかりませんでした。(冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』では「アンナンホシジカ」とありますが確認できませんでした。)南アジア・東南アジアに分布する鹿の亜種で、食用のため乱獲され、絶滅危惧種になってしまっているそうです。
 なお、เนื้อ [nʉ́a/ヌア] には「肉」という意味もあります。
 この言い回しは、鹿のような優しく慈悲深い顔をして、内心は虎のように凶悪だという意味になります。日本語では「狼に衣(ころも)」と言うそうです。

[ 参考文献 ] 冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』養徳社、山田均『タイを歩く トロピカルスマイル』YOU出版局、石井米雄監修『タイの事典』同朋舎出版、岩城雄次郎・斉藤スワニー『タイ語ことわざ用法辞典』大学書林

 

I AM...

self portrait

1963年、愛知県生まれ。男性
1982年、初めてタイを旅行。以後、50数回(短期のトランジットを除く)タイを訪問
2011年度通訳案内士試験(タイ語)合格【観光庁・国家資格】
2012年、総合旅行業務取扱管理者試験合格【観光庁・国家資格】