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タイ文字講座 STEP4 母音符号
blog No.014  投稿日:2020.09.05

タイ語を楽しく、しかも本格的に学習するサイトです。タイ語ってどんなことば? 難しいの? 「コツ」は何?……こんな疑問をお持ちの方に、発音の要領、タイ文字の読み書き、簡単な会話や文法などわかりやすく紹介しています。タイ語に関する様々な雑学をはじめ、タイの歴史や文化に関する幅広い情報、タイ旅行のノウハウや経験談、タイのニュースなど、タイやタイ語への理解が深まる内容も盛りだくさんです。

この記事の内容

 複雑怪奇に見えて取っ付きにくいけど、どことなくユーモラス。このタイ文字の基本的な読み書きができるようになりましょう。タイ文字の習得はタイ語学習の大きな「ヤマ」です。
 前2回では44個の子音字を学びました。今回は母音を表す符号を紹介します。後半では、簡単な単語の読みに挑戦します。

【表14-1】母音符号の一覧
【表14-2】半母音 -i, -u で終わる複合母音
【問題A】「子音字+母音符号」を読んでみましょう
【問題B】「子音字+母音符号+i,u/n,ŋ,m」を読んでみましょう
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今日のことわざ

STEP4 母音符号

母音符号の一覧

 次の表が、タイ語の母音符号の一覧になります。表中の - は子音字の位置を表しています。表の下の補足説明も参照してください。(リンクが貼ってあります。)
 書き方(つまり書き順)については、子音字と同じように、〇があるものは〇から書き始めますが、-ึ [-ʉʔ] は〇をあとに書きます。同じ符号を使う場合は省略しました。
 母音の発音については、blog004/タイ語の発音3 母音のはなしを、ぜひご覧ください。タイ語の母音には日本語にないものが多く、通じるタイ語を習得するには、母音の正しい発音はとても重要です。

                                                                                                    
【表14-1】母音符号
種類短母音長母音
*1 母音符号発音書き方*1 母音符号発音書き方
真正母音
(9つの基本母音)
-ะ, -ั-aʔ, -a-
01-า-aa
アー
02
-ิ-iʔ
03-ี-ii
イー
04
-ึ-ʉʔ
05-ือ, -ื -ʉʉ, -ʉʉ-
ウー
06
-ุ-uʔ
07-ู-uu
ウー
08
เ-ะ, เ-็-eʔ, -e-
09เ--ee
エー
10
แ-ะ, แ-็-ɛʔ, -ɛ-
แ--ɛɛ
エー
11
โ-ะ, *2 ---oʔ, -o-
โ--oo
オー
12
เ-าะ, -็อ-ɔʔ, -ɔ-
-อ-ɔɔ
オー
เ-อะ-əʔ
ウorア
เ-ิอ, เ-ิ-əə, -əə-
ウーorアー
複合母音
(二重母音)
เ-ียะ-iaʔ
イア
เ-ีย*3 *4 -ia
イア
เ-ือะ-ʉaʔ
ウア
เ-ือ*3 -ʉa
ウア
-ัวะ-uaʔ
ウア
-ัว, -ว-*3 -ua, -ua-
ウア
余剰母音
(特殊な母音)
*5rʉ́ or ri
ル or リ
21*5 ฤๅrʉʉ
ルー
22
*6lʉ́ or li
ル or リ
23*6 ฦๅlʉʉ
ルー
24
-ำ-am
アム
25----
*7 ใ--ai
アイ
26----
-ai
アイ
27----
เ-า*8 -au(-ao)
アウ(オ)
----

補足説明
*1) 母音符号が2つ並んでいるのは、左が音節の最後に位置する時、右が音節の途中に位置する時である。
 (例) ละคร [lakhɔɔn/ ラコーン]「劇、芝居」, ลัด [lát/ ラット]「近道をする」
*2) 子音字が2つ並ぶという意味である。
 (例) คน [khon/ コン]「人」, นก [nók/ ノック]「鳥」
*3) この3つについては、本来はそれぞれ長母音で [-iia/ イーア] [-ʉʉa/ ウーア] [-uua/ ウーア] と発音されるが、普通は [-ia] [-ʉa] [-ua] と短母音の場合と同様に発音されるのでそのように表記した。そもそも [-iaʔ] [-ʉaʔ] [-uaʔ] という短母音の語は非常に少なく厳密な区別は必要がないため、なるべく楽な発音になるのだと思われる。
*4) アクセントが i にある(複合母音は必ず最初の母音にアクセントがある)ので、あとに [-ŋ][-n][-m] などの子音が来ると、[-ie] と発音される。*8)も参考のこと。
 (例) เชียงใหม่ [chiaŋ mài] は文字通りなら「チアンマイ」だが実際には「チエンマイ」(「チェンマイ」ではない)と発音される。
*5) タイ語学の伝統にしたがって母音に分類するが、発音や語中での位置を基準に考えると母音をともなう「子音字」と考えた方がよいと思われる。ただし、パーリ・サンスクリット語起源の一部の語しか使わない。
*6) 現在ではほとんど使わない(事実上の廃字)。*5)と同じくタイ語学の伝統にしたがって母音に分類するが、発音や語中での位置を基準に考えると母音をともなう「子音字」と考えた方がよいと思われる。
*7) すぐ下の ไ と同じ発音。区別するために次のようによばれる。
 ใ = ไม้มว้น [mai muan/ マイ ムアン]「巻き符号」 ไ = ไม้มลาย [mai malaai/ マイ マラーイ]
 ใ  は元は [aʉ] と発音されたが現在は同音になった。以下の20語にのみ用いられるが、常用語に多いので覚えなければならない。
 ใกล้ [klâi]「近い」、ใคร [khrai]「だれ」、ใคร่ [khrâi]「欲する」、ใจ [cai]「心」、ใช่ [châi]「そうである」、ใช้ [chái]「使う」、ใด [dai]「いずれの」、ใต้ [tâi]「下、南」、ใน [nai]「内、中」、ใบ [bai]「葉」、ใบ้ [bâi]「口がきけない」、ใฝ่ [fài]「願望する」、สะใภ้ [saphái]「嫁」、ใย [yai]「繊維」、ใส [săi]「透明な」、ใส่ [sài]「入れる」、ให้ [hâi]「与える」、ใหญ่ [yài]「大きい」、ใหม่ [mài]「新しい」、หลงใหล [lŏŋlăi]「惑わされた」、
*8) アクセントが a にあるので、u は軽く発音する。そのためウと聞こえたりオと聞こえたりする。次項も参考のこと。
この表をダウンロード(PDF,195KB)

 

半母音 -i, -u で終わる複合母音

 子音字の ย [yɔɔ] と ว [wɔɔ] は、音節の最後について複合母音をつくります。したがって言語学では「半母音」と言っています。それを次の【表14-2】にまとめました。ほとんどが【表14-1】の母音の最後に ย と ว がくっつくだけですから、あえて覚える必要はないかもしれません。ただし、 *2  *3 だけはスペルが少し違いますので、注意しましょう。
 発音で気をつける点は、タイ語の複合母音(二重母音・三重母音)は必ず最初の母音にアクセントがあるということです。したがって -ว [-u/ ウ] の場合、本来は唇を突き出して発音すべきところ、その途中で終わってしまい、 [-o/ オ] のように聞こえます。この表では、文字表記上の発音をまず書き、( )内に実際の発音を書きました。
 なお、音節の最後の半母音を末子音と考えて、[-y] [-w] という表記もありますが、ここでは [-i] [-u] で統一しました。

                                                                                               
【表14-2】半母音 -i, -u で終わる複合母音
-i で終わる複合母音-u で終わる複合母音
母音符号発音母音符号発音
*1 -ัย-ai
アイ
*2 เ-า-au(-ao)
アウ(オ)
-าย-aai
アーイ
-าว-aau(-aao)
アーウ(オ)
-----ิว-iu
イウ
-ุย-ui
ウイ
----
----เ-็ว-eu(-eo)
エウ(オ)
----เ-ว-eeu(-eeo)
エーウ(オ)
----แ-ว-ɛɛu(-ɛɛo)
エーウ(オ)
โ-ย-ooi
オーイ
----
-อย-ɔɔi
オーイ
----
*3 เ-ย-əəi
ウーイ
----
----เ-ียว-iau(-iao,-io)
イアウ(イアオ、イオ)
เ-ือย*4 -ʉai
ウアイ
----
-วย*4 -uai
ウアイ
----

補足説明
*1) 【表14-1】の ใ [ai]、ไ [ai] と同じ発音。単語によってどれを使うか決まっている。
*2) 【表14-1】にも記載あり(再掲出)。半母音 -ว [-u] で終わるがなぜか -ว の文字は使わない。
*3) เ-ิ [-əə] + ย [-i] であるが、 -ิ が消えてしまうことに注意。タイ語には [-eei] という発音はない。
 (例) เขย [kə̆əi/ クーイ]「婿」 ×เขิย とは書かない。
*4) この2つについては、本来はそれぞれ長母音で [-ʉʉai/ ウーアイ] [-uuai/ ウーアイ] と発音されるが、普通は [-ʉai] [-uai] と短母音の場合と同様に発音されるのでそのように表記した。【表14-1】の補足説明(脚注)*3も参照のこと。
この表をダウンロード(PDF,235KB)

【問題A】「子音字+母音符号」を読んでみましょう

 子音字と母音符号がわかれば文字を読むことができます。blog011のタイ文字のしくみをご覧ください。
 まだこれから学ぶべき事柄は多いのですが、簡単な単語ならもう読めるはずです。まず、「子音字+母音符号」という単純な単語を読んでみましょう。
 次のタイ文字を読んで、正しいと思う〇をクリックしたあと、確認ボタンを押してください。
 最初は文字の表(【表12】【表14-1】など…リンクは別のタブまたはウィンドウが開きます)を見ながら、1つずつ確認していきましょう。

1)นา maa naa baa
2)คอ kɔɔ koo khɔɔ
3)หู huu hʉʉ hŭu
4)แพ phee phɛɛ phəə
5)มือ məə muu mʉʉ
6)บัว bua bau bai
7)ทำ thaa kam tham
8)เสือ sĭa sua sʉ̆a
9)เรา reu(o) rau(o) ree
10)ไอ hai ʔai hoo

※解説 3)ห と8)ส は高子音なので上声の声調となる。5)は音節の最後の [ʉʉ] なので、มื だけではなく อ をつける。
※各単語の意味 1)田、2)のど、3)耳、4)いかだ、5)手、6)蓮、7)する、8)虎、9)私たち、10)蒸気、ガス

【問題B】「子音字+母音符号+i,u/n,ŋ,m」を読んでみましょう

 【問題A】の応用です。「子音字と母音符号」に 半母音[i,u] や [n,ŋ,m] を表す子音字がついています。blog011のタイ文字のしくみもご覧ください。
 正しいと思う〇をクリックしたあと、確認ボタンを押してください。
 末子音で [n] と読む字は非常に多いので注意してください。 

11)ลาย lai rau laai
12)เนย nəəi nei neei
13)แมว meu mɛɛu meeu
14)แรง rɛɛŋ lɛɛŋ rɛn
15)ดิน khiin diin din
16)คุณ khun khuum khuŋ
17)ลืม lʉʉm lʉʉn luuŋ
18)คน khon khɔɔn khɔn
19)เมือง muaŋ mʉaŋ mʉʉŋ
20)การ kaar kaa kaan

※解説 12)เ-ิ [-əə] + ย [-i] であるが、 -ิ が消えてしまうことに注意。タイ語には [-eei] という発音はない。16)-ณ、20)-ร など末子音が [-n] となる子音字は多い。18)のように2つの子音字が並んでいる場合は、間に [o] を入れて発音する。頻出する読み方である。
※各単語の意味 11)模様、デザイン、12)バター、13)猫、14)力、15)土、16)あなた、17)忘れる、18)人、19)国、町、20)~すること

過去の関連記事

タイ文字講座 STEP1 タイ文字のしくみ
タイ文字講座 STEP2 子音字(1) ก ไก่ (コーカイ)
タイ文字講座 STEP3 子音字(2) 発音編

 

今日のことわざ

รักวัวให้ผูก รักลูกให้ตี

[rák wua hâi phùuk, rák lûuk hâi tii / ラック ウア ハイ プーク、ラック ルーク ハイ ティー]
日本語訳:牛が可愛けりゃ繋いでおけ、子どもが可愛けりゃ叩け

 日本では2020年4月から法律が改正され、親がしつけに際して子どもに体罰を加えることを禁止しました。しかし「愛のムチ」を信じる大人からは反発もあるようです。タイでも「愛のムチ」信仰は根強く、親による虐待事件がしばしば報道されます。最近の研究では、子どもへの暴力(ネグレクトや強い叱責など精神的暴力も含む)は子どもの成長を阻害するだけで効果はないことがわかってきました。
 このことわざも文字通り解釈すれば、「愛のムチ」を積極的に肯定しているように見えますが、もう少し広く「可愛い子には旅をさせよ」くらいの意味にとりたいと思います。
 ちなみにこの後、こう続きます。
 รักมีให้ค้า รักหน้าให้คิด รักมิตรให้เตือน [rák mii hâi kháa, rák nâa hâi khít, rák mít hâi tʉan/ ラック ミー ハイ カー、ラック ナー ハイ キット、ラック ミット ハイ トゥアン]
 「金持ちでいたきゃ商売をしろ、いい顔したけりゃ物事をよく考えろ、友を愛するなら忠告してやれ」となかなか奥が深いです。

[ 参考文献 ] 冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』養徳社、河部利夫『基礎タイ語』大学書林、1982年、岩城雄次郎・斉藤スワニー『タイ語ことわざ用法辞典』大学書林、1998年

 

I AM...

self portrait

1963年、愛知県生まれ。男性
1982年、初めてタイを旅行。以後、50数回(短期のトランジットを除く)タイを訪問
2011年度通訳案内士試験(タイ語)合格【観光庁・国家資格】
2012年、総合旅行業務取扱管理者試験合格【観光庁・国家資格】