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タイ文字講座 STEP5 声調符号と声調
blog No.017   投稿日:2020.10.18

タイ語を楽しく、しかも本格的に学習するサイトです。タイ語ってどんなことば? 難しいの? 「コツ」は何?……こんな疑問をお持ちの方に、発音の要領、タイ文字の読み書き、簡単な会話や文法などわかりやすく紹介しています。タイ語に関する様々な雑学をはじめ、タイの歴史や文化に関する幅広い情報、タイ旅行のノウハウや経験談、タイのニュースなど、タイやタイ語への理解が深まる内容も盛りだくさんです。

この記事の内容

 複雑怪奇に見えて取っ付きにくいけど、どことなくユーモラス。このタイ文字の基本的な読み書きができるようになりましょう。タイ文字の習得はタイ語学習の大きな「ヤマ」です。
 タイ文字講座STEP1~4の4回(blog011,blog012,blog013,blog014)で、文字の基本を学びました。今回からは「タイ語の命ともいえる」声調のルールについて理解します。まず声調符号と声調の関係について説明します。最後に簡単な問題もありますので、挑戦してみてください。

声調符号
声調符号と声調との関係
低中高の3種類の子音字と声調
発音・声調と頭子音字の種類
【問題】正しい声調で読んでみましょう
過去の関連記事
今日のことわざ

STEP5 声調符号と声調

声調符号

 次の【表17-1】が声調を表す符号で、4つあります。
 声調については blog003 で詳しく説明していますので、そちらもご覧ください。

                    
【表17-1】声調符号 วรรณยุกต์ [wannáyúk]
符号符号の呼び名
タイ語発音日本語
mai eekไม้เอก[mái ʔèek / マイ エーク]第1声調符号
mai thooไม้โท[mái thoo / マイ トー]第2声調符号
mai triiไม้ตรี[mái trii / マイ トゥリー]第3声調符号
mai cattawaaไม้จัตวา[mái càttàwaa / マイ チャッタワー]第4声調符号

補足説明
1.声調符号は子音字の右肩につける。符号の下のグレーの縦線に、子音字の右側の縦画が来るようにする。
(例)บ่ อ้
(ただし、端末の画面では多少ずれて表示されることもある)
2.タイ語名の、เอก [èek], โท [thoo], ตรี [trii], จัตวา [càttàwaa] は、それぞれ「第1(1つ、1等)の」「第2の」「第3の」「第4の」という意味である。

 この声調符号を見て、アラビア数字の1、2、3、4と形がよく似ているなあと思いました。符号の意味も「第1の」「第2の」…です。数字の歴史を考えれば次のように説明できるのではないでしょうか。古代インドのグプタ朝時代(4~6世紀)にできた数字が、西方のイスラーム世界を経由してヨーロッパに伝わったのが「アラビア数字」です。タイ文字はインドの文字を源流にしているので、アラビア数字とはいわば同根です。似ていて当然かもしれません。
 もっと言えば、โท [thoo]と英語の two、ตรี [trii]と英語の three も似ていますが、英語が北インド諸語と共通の祖語を持つ同じ語族であることを踏まえると、やはり何らかの関係性がありそうです。

声調符号と声調との関係

 กา [kaa] に声調符号をつけてみたのが次の表【表17-2】です。

               
【表17-2】กา + 声調符号
声調符号なし第1声調符号第2声調符号第3声調符号第4声調符号
タイ文字กาก่าก้าก๊าก๋า
発音kaakàakâakáakăa
声調平声
普通声調
低声
第1声調
下声
第2声調
高声
第3声調
上声
第4声調

【図17-3】声調のイメージ
5 tones

 【表17-2】の声調の名称は、上段が日本でよく用いられるもの、下段がタイ語の名称です。日本式は声調の特徴を表していてわかりやすいので、この順番は「平・低・下・高・上(へい・てい・か・こう・じょう)」と覚えてしまいましょう。表をみてお分かりの通り、声調符号の順番(符号なし、第1声調符号、第2声調符号…)に「平・低・下・高・上」、タイ語名だと「普通声調、第1声調、第2声調、…」の声調に発音します。【図17-3】では、⓪①②③④で示しました。ここまでは簡単ですね。
 では、①ค่า、②กากはどう発音するのでしょうか。
 ① 第1声調符号 ไม้เอก [mái ʔèek] が付いている → 第1声調(低声)[khàa] ……違います。正しくは第2声調(下声) [khâa] です。
 ② 声調符号がない→普通声調(平声)[kaak] ……これも違います。正しくは第1声調(低声)[kàak] です。
 なぜこうなるのかというと、①は語頭の子音字(頭子音字)の種類が違うからです。②は「平音節」と「促音節」の違いが原因です。①の子音字と声調の関係について以下に詳しく説明します。②については次回 タイ文字講座 STEP6で説明する予定です。

低中高の3種類の子音字と声調

 タイ文字の44の子音字は、低子音字 อักษรต่ำ [àksŏoŋ tàm / アクソーン タム] 24文字・中子音字 อักษรกลาง [àksŏoŋ klaaŋ / アクソーン クラーン] 9文字・高子音字 อักษรสูง [àksŏoŋ sŭuŋ / アクソーン スーン] 11文字の3つに分類します。これについては、blog No.012blog No.013 で一度説明しました。
 この、頭子音字の種類と声調符号の組み合わせによって、声調が決まります。これをまとめたのが次の【表17-4】です。この表ではわかりやすいように、低子音字 ค [khɔɔ]、中子音字 ก [kɔɔ]、高子音字 ข [khɔ̆ɔ]を例として表しています。 

                                       
【表17-4】頭子音字の種類と声調の関係
頭子音字の種類声調符号なし第1声調符号第2声調符号第3声調符号第4声調符号
低子音字
例:
タイ文字คาค่าค้า
発音khaakhâakháa
声調平声
普通声調
下声
第2声調
高声
第3声調
中子音字
例:
タイ文字กาก่าก้าก๊าก๋า
発音kaakàakâakáakăa
声調平声
普通声調
低声
第1声調
下声
第2声調
高声
第3声調
上声
第4声調
高子音字
例:
タイ文字ขาข่าข้า
発音khăakàakâa
声調上声
第4声調
低声
第1声調
下声
第2声調

補足説明 空欄の部分は、原則としてそのような表記はしないということ
この表をダウンロード(PDF,109KB)

【表17-4】の通り、タイ語では中子音字を基準にして声調符号名と声調名をつけています。そして、低子音字と高子音字では、黄色の部分が中子音字と異なる声調になります。最初は複雑に感じるかもしれませんが、慣れれば自然に身についてくるものです。

発音・声調と頭子音字の種類

 この項目は少し発展的な内容です。実は、声調を含めた発音と文字の関係を理解する一助になる、重要な内容でもありますが、知らなくても読み書きはできます。したがってここを飛ばして次へ行っても差支えありませんが、学習が進んだときには、この項目が役に立つと思います。
 前の項目の内容を、発音と声調を基準に並び替えたのが次の【表17-5】です。

              
【表17-5】発音・声調を基準にした頭子音字の種類と声調符号の関係
発音頭子音字の種類普通声調
平声
第1声調
低声
第2声調
下声
第3声調
高声
第4声調
上声
無気音
[k]
kaakàakâakáakăa
中子音字
กาก่าก้าก๊าก๋า
有気音
[kh]
khaakhàakhâakháakhăa
低子音字
例:
คาค่าค้า
高子音字
例:
ข่าข้าขา

 【表17-5】の通り、無気音は中子音字を使って、5つの声調全てを表記できます。(中子音字は、頭子音(音節の最初の子音)の無気音[k][c][t][p][ʔ]、あるいは日本語の濁音[d][b]を表します。)一方、有気音[kh][ch][th][ph]は、低子音字と高子音字の2種類の文字でようやく5つの声調全てを表記できるのです。(第2声調=下声はダブっています。どの文字を使うかは、それぞれの単語で決まっています。)
 ただしここで問題が生じます。無気音と有気音の対立がない発音はどう書くのか、という問題です。
 頭子音[s][h]については、低子音字と高子音字の2種類があるので、問題なく5つの声調全てを表記できます。
 ところが、頭子音[m][ŋ][n][r][l][y][w]を表す文字は、低子音字しかありません。そのため、第1声調(低声)と第4声調(上声)が表記できません。そこで、子音字の前に高子音字の ห [hɔ̆ɔ] をつけて高子音字化するという、ちょっと面倒くさいことをします。例として、頭子音[m]について次の【表17-6】にまとめておきました。高子音字化したものは、高子音字と全く同じ声調符号と声調の関係で発音します。このパターンはとても多いので、ぜひ慣れてください。
※この辺りの、頭子音と文字の関係については、 blog No.013【表13】発音別に並べた子音字 をご覧いただければよくわかると思います。

           
【表17-6】頭子音[m]で始まる音節の声調の表記方法
発音頭子音字の種類普通声調
平声
第1声調
低声
第2声調
下声
第3声調
高声
第4声調
上声
[m]maamàamâamáamăa
低子音字
มาม่าม้า
高子音字化
หม
หม่าหม้าหมา

補足説明
1.ห は発音しない(黙字(もくじ))。タイ語では、ห-นำ [hɔ̆ɔ nam]「引字(いんじ)のhɔ̆ɔ」とよぶ。高子音字化の記号として考えるとよい。
2.したがって単語の最初に ห があるときには、[h] の発音なのか高子音字化の黙字(引字)なのかを区別する必要がある。タイ文字表記に慣れればそれほど難しくない。
3.声調符号はあとの子音字につける。子音字が連続する時、声調符号は必ずあとの文字につけるルールになっている。
4.これ以外に、中子音字 อ をつけて、中子音字化することもある。これについては機会を改めて触れる。

【問題】正しい声調で読んでみましょう

 声調は、声調符号と頭子音字の種類で決まります。このことに気をつけて正しい声調で読んでみましょう。正しいと思う〇をクリックしたあと、確認ボタンを押してください。
 最初は、【表17-4】(リンクは別のタブまたはウィンドウが開きます)を見ながら、1つずつ確認していきましょう。
ヒント…複合母音で終わる単語(6~9)、半母音[-i], [-u]で終わる単語(10~12)、[-n][-ŋ][-m]で終わる単語(13~15)のいずれも、同じルールで発音すればOKです。

1)ผู้ phùu phûu phŭu
2)นี่ nii nìi nîi
3)ต่อ tɔ̀ɔ tɔ̂ɔ tɔɔ
4)ซื้อ sʉ́ʉ sʉ̂ʉ sʉ̆ʉ
5)แก้ kɛ́ɛ kɛ̂ɛ kɛ̆ɛ
6)ไข้ khài khâi khăi
7)เสื่อ sʉ̀a sʉ̂a sʉ̆a
8)เบี้ย bìa bîa bĭa
9)ตั๋ว tùa tûa tŭa
10)ย้าย yàai yâai yáai
11)ป่วย púai pùai pûai
12)เกี๊ยว kíau kîau kĭau
13)ท้อง thɔ́ɔŋ thɔ̂ɔŋ thɔ̆ɔŋ
14)ฉัน chàn chân chăn
15)อุ่น ʔùn ʔun ʔûn

※解説 頭子音字が低子音字、中子音字、高子音字のどれであるかをまず注目すること。濁音を含む無気音は中子音字となる。14)は声調符号がついてないが、頭子音字が高子音字 ฉ なので上声となる。15)の อ は声門破裂音を示す中子音字。
※各単語の意味 1)人、2)これ、3)続ける、4)買う、5)ほどく、直す、6)熱、病気、7)ござ、8)貝、9)切符、10)移動する、11)病気になる、12)ワンタン、13)腹、14)私、15)温める

過去の関連記事

タイ文字講座 STEP1 タイ文字のしくみ
タイ文字講座 STEP2 子音字(1) ก ไก่ (コーカイ)
タイ文字講座 STEP3 子音字(2) 発音編
タイ文字講座 STEP4 母音符号

 

今日のことわざ

วัวหายล้อมคอก

[wua hăai lɔ́ɔm khɔ̂ɔk / ウア ハーイ ローム コーク]
日本語訳:牛が逃げて囲いをつくる

 前回(blog014)に続いて、วัว [wua]「牛」の登場です。以前タイでは、牛乳や乳製品はあまり好まれなかったようですが、ここでも食の西洋化が進み、消費量は増えています。農村で田んぼの草を食べていたり寝転がっているのをよく見ますが、おそらくそれは牛ではなく水牛です。タイ語では水牛は ควาย [khwaai] といって、はっきり区別しています。
 せっかく、文字と声調の関係を勉強したのですから、このことわざで確認しましょう。
 หาย…頭子音が高子音字で平音節です。声調符号はありません。したがって、上声(第4声調)で [hăai] と発音します。
 ล้อม…頭子音は低子音字で平音節、第2声調符号がついていますので、高声(第3声調)で [lɔ́ɔm] となります。
 คอก…この声調は少し複雑で、次回のblog018で説明します。頭子音は低子音字ですが、末子音が[-k]の促音節です。その前の母音は長母音なので、下声(第2声調)で発音し、[khɔ̂ɔk] となります。
 ことわざの意味は分かりやすいですね。日本語だと、「泥棒を見て縄をなう」つまり「泥縄」、あるいは「後の祭り」と言い換えられそうです。

[ 参考文献 ] 冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』養徳社、河部利夫『基礎タイ語』大学書林、1982年、岩城雄次郎・斉藤スワニー『タイ語ことわざ用法辞典』大学書林、1998年

 

I AM...

self portrait

1963年、愛知県生まれ。男性
1982年、初めてタイを旅行。以後、50数回(短期のトランジットを除く)タイを訪問
2011年度通訳案内士試験(タイ語)合格【観光庁・国家資格】
2012年、総合旅行業務取扱管理者試験合格【観光庁・国家資格】