タイ文字講座 STEP8 子音字の連続(2)読まない字
blog No.020 投稿日:2021.1.10 /一部修正:2021.7.11
この記事の内容
複雑怪奇に見えて取っ付きにくいけど、どことなくユーモラス。このタイ文字の基本的な読み書きができるようになりましょう。タイ文字の習得はタイ語学習の大きな「ヤマ」です。
前回と今回の2回にわたって、子音字が連続するときの発音パターンを学習しています。ここをクリアするとかなり文字が読めるはずです。
・子音字が連続するときの発音
・(c) 実際には単独の子音として発音するパターン……読まない文字がある
・(c-1) 単独の子音として発音するパターン……ร を読まない
・(c-2) 単独の子音として発音するパターン……引字の อ と ห
・引字の ห が必要なわけ
・【問題】正しい発音で読んでみましょう
・過去の関連記事
・今日のことわざ
STEP8 子音字の連続(2) 読まない字
子音字が連続するときの発音
前回の blog019 で説明したように、語頭から子音を表す文字が連続するときの発音は、次の4パターンになります。
(a)最初の子音字のあとに [-o-] を入れて発音するパターン
(例)กบ [kòp /コップ]「蛙」
※blog014 で学習しました
(b)実際に二重子音として発音するパターン
(例)กลาง [klaaŋ /クラーン]「真ん中」
กล- を [kl- /クル] と連続した子音(二重子音)で発音します。
※前回の blog019 で学習しました
(c)実際には単独の子音として発音するパターン
(例)สระ [sàʔ /サッ]「池」
二番目の子音字 ร [r] は、実際には発音しません。(発音しない文字を黙字と言います)
※今回の blog020 で学習します
(d)最初の子音字のあとに [-a] を入れて発音するパターン
(例)สนาม [sànăam/ サナーム]「広場」
一番目の子音字 ส [s] のあとに [-a] を加えて、後半の音節 นาม [naam] につなげます。
※blog021 で学習します
(c) 実際には単独の子音として発音するパターン……読まない文字がある
(c)は頭子音が2つ並び、一見すると二重子音に見えますが、実際には単独の子音の発音になるパターンです。これはさらに、
(c-1)第二子音字(二番目の子音字)の ร を読まないパターン
(c-2)第一子音字(一番目の子音字)の อ, ห を読まないパターン
の2つのパターンに分けられます。
(c-1) 単独の子音として発音するパターン……ร を読まない
(c-1-1) 第二子音字の ร を読まずに無視するパターン
次のスペルの時には、第二子音字の ร を読みません。しかし、声調符号や -ิ, -ู など子音字の上下につく母音符号は、読まない第二子音字 ร につけます。声調は第一子音字に従います。
・จร- (例)จริง [ciŋ]「真実の」(このパターンはこの語のみです)
・ซร- (例)โซรม [soom]「助け合う」(このパターンは非常に少ないです)
・ศร- (例)เศร้า [sâu]「悲しい」
・สร- (例)สร้าง [sâaŋ]「建設する」(あとの2つのパターンはかなり多いです)
※สระ は[sàʔ]と読むと「池」、[sàràʔ]と読むと「母音」の意味になります。
(c-1-2) ทร =ซ [s] と読むパターン
ทร- を ซ- 1文字と見なして [s] と読みます。やはり声調符号や -ิ, -ู など子音字の上下につく母音符号は、第二子音字 ร につけます。声調は第一子音字に従います。(すなわち低子音扱いです。)
(例)ทราบ [sâap]「知っている」
この ร を読まないパターンに関連して、よく見る誤りを指摘しておきます。次の地図は、ある出版社発行の地図帳にあるバンコクの地図です。黄色の下線を引いた部分に注目してください。
・[×]スリアユタヤ通り→[〇]スィーアユッタヤー通り(ศรีอยุธยา [sĭiʔàyútthayaa])
ศรี [sĭi] は「吉祥、繁栄、美」という意味で、地名・人名等に接頭語的によく使われます。ただし英語表記ではタイ語のスペル通りに「sri」と書くことが多いので、タイ語の知識がない人はそれを「スリー」「スリ」と読んでしまいます。他のページでは[×]スリナカリンダムになっていました。もちろん[〇]スィーナカリン(ศรีนครินทร์ [sĭinákharin]、ラーマ8世・9世王母の名前)が正解です。
・[×]ワット・スラケット→[〇]ワット・サケート(วัดสระเกศ [wát sakèet])
สระ は [sàʔ/サッ] と読みます。これもタイ語の綴り字を基にした英語 Wat Srakesa から日本語にしたのかもしれません。
(c-2) 単独の子音として発音するパターン……引字の อ と ห
次に(c-2)第一子音字(一番目の子音字)の อ, ห を読まないパターンを見ます。(引字の อ と ห )
(c-2-1) อ は読まないが、後ろを中子音字化するパターン
第一子音字の อ は発音しませんが、第二子音字を อ と同じ中子音字に変える働きがあります。このように、すぐ次の低子音字を中子音字や高子音字に変える働きを持つ文字を引字(いんじ)( อักษรนำ [ʔàksɔ̆ɔn nam])といい、 อ を อ-นำ [ʔɔɔ nam] 「引字の อ 」とよんでいます。
このパターンは次の4つの単語しかありませんが、いずれも非常によく使う単語ですので、このまま覚えてしまいましょう。
・อย่า [yàa]「~するな(禁止・制止を示す)」
・อยาก [yàak]「~したい」
・อย่าง [yàaŋ]「~のように」
・อยู่ [yùu]「居る。~している」
(c-2-2) ห は読まないが、後ろを高子音字化するパターン
第一子音字の ห は発音しませんが、第二子音字を ห と同じ高子音字に変える引字として働きます。ห を ห -นำ [hɔ̆ɔ nam] 「引字の ห 」とよんでいます。声調符号や -ิ, -ู など子音字の上下につく母音符号は、第二子音字につけます。
このパターンにあてはまる単語は非常に多くあります。
(例)หงาย [ŋăai]「仰向けになる」、หญิง [yĭŋ]「女」、หน้า [nâa]「顔」
หลอด [lɔ̀ɔt]「管」、 หย่า [yàa]「離婚する」、หวาน [甘い]「wăan」
ここで、 ห に続く第二子音字は低子音字で、同じ発音の文字が高子音にない文字(低子音字単独字)に限られていることを指摘しておきます。低子音字単独字( อักษรต่ำเดี่ยว [ʔàksɔ̆ɔn tàm dìau])とは、頭子音[m][ŋ][n][r][l][y][w]を表す、ม, ง, น, ณ, ร, ล, ฬ, ย, ญ, ว の10個の文字のことです。これについては、次項で詳しく説明します。
引字の ห が必要なわけ
なぜ引字などという、読まない文字をくっつけるのかという疑問を持つ方が多いと思います。それは、低子音字単独字では第1声調(低声)と第4声調(上声)を表すことができないからです。
次の【表20-1】をご覧ください。
子音 [kh-] を表す文字は、低子音字 ค のほか、高子音字にも ข があるので、この2文字を使えばすべての声調を書き表すことができます。このように、高子音字にも同じ発音の文字がある低子音字を「低子音字対応字( อักษรต่ำคู่ [ʔàksɔ̆ɔn khûu])」といいます。例えば、低子音字 ค には高子音字 ข、低子音字 พ には高子音字 ผ が対応しています。
ところが、対応する高子音字がない「低子音字単独字」では、書き表すことのできない声調が出てきてしまいます。それを解決する手段が、高子音字の ห を読まない引字として書くことというわけです。
(これについては、以前 blog017【表17-5】 、 blog017【表17-6】 でも触れました。)
発音 | 頭子音字の種類 | 普通声調 平声 | 第1声調 低声 | 第2声調 下声 | 第3声調 高声 | 第4声調 上声 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
[kh] | 低子音字対応字 | ค | คา | ค่า | ค้า | ||
対応する高子音字 | ข | ข่า | ข้า | ขา | |||
[m] | 低子音字単独字 | ม | มา | ม่า | ม้า | ||
高子音字化 | หม | หม่า | หม้า | หมา |
なお、 ห が引字かそうでないかによって、発音と意味が変わる単語もあります。
(例)แหน
①引字として読むと [nɛ̆ɛ]。意味は「水草の一種」
②引字で読まないと [hɛ̆ɛn]。意味は「大切に守る」
【問題】正しい発音で読んでみましょう
正しいと思う〇をクリックしたあと、確認ボタンを押してください。
1)~4)は読まない ร、5)~10)は読まない引字の อ と ห が含まれます。