タイ文字講座 STEP7 子音字の連続(1)二重子音
blog No.019 投稿日:2021.1.10 /一部修正:2021.7.11
この記事の内容
複雑怪奇に見えて取っ付きにくいけど、どことなくユーモラス。このタイ文字の基本的な読み書きができるようになりましょう。タイ文字の習得はタイ語学習の大きな「ヤマ」です。
前回は、音節の種類と声調の関係を整理しました。今回から3回にわたって、子音字が連続するときの発音パターンを学習します。この辺りから少々複雑になってきますが、実践的な技能のためにはぜひマスターしたいところです。
・子音字が連続するときの発音
・(b) 実際に二重子音として発音するパターン(真正二重子音字)
・真正二重子音の発音
・インド由来の語は二重子音ではなく [-a] をはさむ
・【問題】正しい発音で読んでみましょう
・過去の関連記事
・今日のことわざ
STEP7 子音字の連続(1) 二重子音
子音字が連続するときの発音
語頭から子音を表す文字が連続するときの発音には、実に様々なパターンがあってややこしいのですが、大きく分けると次の4パターンになるようです。[ ]内に発音を記号とカタカナ(カタカナはあくまで参考程度と考えてください)で示しました。
(a)最初の子音字のあとに [-o-] を入れて発音するパターン
(例)กบ [kòp /コップ]「蛙」
このパターンについては、【表14-1】母音符号、補足説明2ですでに学習しました。
(b)実際に二重子音として発音するパターン
(例)กลาง [klaaŋ /クラーン]「真ん中」
กล- を [kl- /クル] と連続した子音(二重子音)で発音します。
※今回の blog019 で学習します
(c)実際には単独の子音として発音するパターン
(例)สระ [sàʔ /サッ]「池」
二番目の子音字 ร [r] は、実際には発音しません。(発音しない文字を黙字と言います)
※blog020 で学習します
(d)最初の子音字のあとに [-a] を入れて発音するパターン
(例)สนาม [sànăam/ サナーム]「広場」
一番目の子音字 ส [s] のあとに [-a] を加えて、後半の音節 นาม [naam] につなげます。
※blog021 で学習します
(b) 実際に二重子音として発音するパターン(真正二重子音字)
このパターンになるのは、基本的には次の12種類の発音しかありません。その種類と文字の表記を次の【表19-1】に示しました。この時の連続した子音字群を、真正二重子音字( อักษรควบแท้ [ʔàksɔ̆ɔn khûap thɛ́ɛ])と呼んでいます。
なお、タイ語の二重子音は必ず頭子音の位置に来て、末子音にはなりません。また、英語のような三重子音(例えば、strait の str-)はありません。
発音 | 文字 | 発音 | 文字 | 発音 | 文字 |
---|---|---|---|---|---|
kr- | กร-, กฤ- | kl- | กล- | kw- | กว- |
khr- | คร-, คฤ-, ขร- | khl- | คล-, ขล- | khw- | คว-, ขว- |
tr- | ตร-, ตฤ- | ||||
thr- | ทฤ- | ||||
pr- | ปร-, ปฤ- | pl- | ปล- | ||
phr- | พร-, พฤ-, ภร- | phl- | พล-, ผล- |
補足1 ขร-は高子音字、กร-は中子音字、無地は低子音字として扱うことを示します。
補足2 -ฤ を使う語は少ないです。発音は[ri]または[rʉ](単語による)のように母音をともないます。
(例)กฤษฎีกา [krítsàdiikaa]「勅令」、 พฤกษา [phrʉ́ksăa]「樹木」
補足3 英語など外国語からの借用語には、次のような二重子音を使うことがあります。
thr- ทร (例)ทรอมโบน [thrɔɔmboon] <trombone「トロンボーン」
fr- ฟร, fl- ฟล (例)ฟรี [frii] <free「無料」
br- บร, bl- บล (例)เบรก [brèek] <brake「ブレーキ」
文字を読むのは難しくないと思います。例えば、กร- は ก [k] + ร [r] なので [kr]、พล- は พ [ph] + ล [l] で [phl] となります。
なお、ทร- は [thr-] という二重子音ではなく、[s-] と読むことが多いので注意してください。(上の表の補足3、このあとの項目も参照してください)
(例)ทราย [saai]「砂」
また、二重子音を表す子音字2字はいつもくっついて離れません。声調符号や -ิ, -ู など子音字の上下につく母音符号は、第二子音字(二番目の子音字)につけます。
(例)เตรียม [triam] 「準備する」…二重子音 ตร [tr-] + 母音 เ-ีย [-ia] + 末子音 -ม [-m]
เครื่อง [khrʉ̂aŋ] 「器、機械」…二重子音 + 第1声調符号 คร่ [khr̂-] + 母音 เ-ือ [-ʉa] + 末子音 -ง [-ŋ]
なお、上の【表19-1】で -ฤ となる語はすべてパーリ・サンスクリット語起源の語ですが、それ以外で真正二重子音となるのは純タイ語に限られます。これについては、下の項目で改めて触れます。
真正二重子音の発音
声調
第一子音字(最初の子音字)を頭子音字と見なし、声調符号・音節の種類と声調の規則に従います。(声調の規則については、【表18-3】文字と声調の規則を参照。別のウィンドウかタブが開きます)
つまり、上の【表19-1】真正二重子音字で、ขร-のように赤色の地で表したものは高子音字、กร-のように緑色の地で表したものは中子音字、無地のものは低子音字として扱うわけです。いくつか例を挙げてみます。
(1)低子音字と見なす例(คล- [khl-])
คลอง [khlɔɔŋ]「運河」、คลื่น [khlʉ̂ʉn]「波」、คล้าย [khláai]「よく似ている」
คลุก [khlúk]「混ぜる」、คลอด [khlɔ̂ɔt]「産む」
(2)中子音字と見なす例(กล- [kl-])
กลอง [klɔɔŋ]「太鼓」、กลิ่น [klìŋ]「におい」、กล้า [klâa]「勇敢な」、กลับ [klàp]「帰る」
(3)高子音字と見なす例(ขว [khw-])
ขวา [khwăa]「右」、ไขว่ [khwài]「忙しく動くさま」、ขว้าง [khwâaŋ]「投げつける」、ขวด [khwàt]「瓶」
発音の要領
日本語ネイティブは、例えば、กร- [kr-] を [kur- / クル] のように、母音の [-u-] を挟んで発音しがちですが、そうではありません。むしろ、[-r][-l] の二重子音については、最初から舌を [r][l] の位置と構えで、[k-][kh-][p-][ph-]などの子音を発音する感じになります。そうすると、例えば [kr-] は、単純な [k-] ではなく、それよりも少しくぐもった音になると思います。もちろん、もっとクリアに二重子音を発音する人もいますので、最初はそのように発音した方がわかりやすいでしょう。
[-r][-l]の省略
タイの北部や、東北部からラオスでは、二重子音の後ろの [-r][-l] が欠落します。
(例)ปลา [plaa]「魚」→ [paa]
ラオスに行くと、文字表記でも [-r][-l] に当たる文字が消えてしまいます。
バンコク辺りでも(上記地域の出身者を含めて)そのように発音する人もいます。しかし上で説明したように、最初から舌を [r][l] に構えて発音する人も多く、その発音は [-r][-l] の欠落のようにも聞こえるかもしれませんが、慣れてくると、例えば [p-] と [pr-] や [pl-] の違いが聞こえてきます。
インド由来の語は二重子音ではなく [-a] をはさむ
では、次の単語はどう読むでしょう。
(1) ปริมาณ 「量」
ปริ- は二重子音 [pr-] + [i] 、声調は第一子音字(ป 中子音字)に従うので低声(第1声調)。つまり、[prì-maan] となる……違います。正解は [pà-rí-maan](または [pa-ri-maan] ※下の注を参照)です。
(2) กรุณา 「すみませんが~してください」
กรุ- は二重子音 [kr-] + [u] 、声調は第一子音字(ก 中子音字)に従うので低声(第1声調)。つまり、[krù-naa] となる……違います。正解は [kà-rú-naa](または [ka-ru-naa] ※下の注を参照)です。
つまり、(1)(2)とも二重子音ではなく、第一子音字のあとに母音の [-a] を入れて発音します。それは、パーリ・サンスクリット語起源の語だからです。
この場合、第一子音字 + [-a] の音節と、それ以後の音節の声調はそれぞれのルールに従って決まります。(1)は ป [pà] -ริ [rí] -มาณ [maan]、(2)は ก [kà] -รุ [rú] -ณา [naa]と読みます。
実際には【表19-1】に示した子音字の組合せの場合には、二重子音で読むことが多いのですが、そうではない単語があることも覚えておきましょう。学習が進むと、その単語が純タイ語で二重子音なのか、パーリ・サンスクリット語起源で [-a] を入れるのか、少しずつ判断できるようになると思います。
なお、【表19-1】で -ฤ となる語はすべてパーリ・サンスクリット語起源の語ですが、表に示した通り二重子音で発音します。
声調の例外
それでは、次の単語の読み方はどうなるでしょう。
(3) ผลึก 「水晶」
ผ [phà] -ลึก [lʉ́k]。つまり、[phà-lʉ́k](または [pha-lʉ́k])となる。
……声調が違います。正解は [phà-lʉ̀k](または [pha-lʉ̀k] ※下の注を参照)と読みます。
なぜかという説明はしにくいのですが、私が思うに、パーリ・サンスクリット語起源でありながら、汎用された結果、純タイ語に準ずる扱いをされ、純タイ語の声調規則で発音されるようになったと考えられます。
ここでいう純タイ語の声調規則については、 blog021 で改めて説明しますが、簡単に言うと、第一子音字が高子音か中子音の場合、第二子音字の低子音字を中子音字や高子音字に変えることでその声調を支配するというルールです。このルールを(3) ผลึก に当てはめると、高子音字 ผ が ล を高子音字化するので、ลึก は [lʉ̀k] と低声(第1声調)で発音するというわけです。
※注 音節の軽声化について
第一子音字 + [-a] の音節は軽く発音される傾向にあり、本来の声調もはっきりせず、軽く平声(普通声調)で発音するのが一般的です。また、多数の音節から成る単語は、他の単語と混同する恐れがないので、声調がなくなる傾向があります。そもそも単音節中心のタイ語では、同音を区別するために声調があるからです。(単音節言語と発音との関係については、blog002 どうして発音がこんなに難しいのか? もご覧ください。)つまり、紛らわしくなければなるべく楽に発音するようになるというわけです。どの言語でもごく当たり前に起きている現象です。
【問題】正しい発音で読んでみましょう
正しいと思う〇をクリックしたあと、確認ボタンを押してください。
1~7は真正二重子音、8~10は [-a] をはさんで発音します。