タイ文字講座 STEP11 その他の発音
blog No.023 投稿日:2021.7.11
この記事の内容
複雑怪奇に見えて取っ付きにくいけど、どことなくユーモラス。このタイ文字の基本的な読み書きができるようになりましょう。タイ文字の習得はタイ語学習の大きな「ヤマ」です。
今回は、今までのルールで説明しきれなかった文字の発音についてまとめました。このあたりまで来ると、法則化・パターン化するより、多くの単語に当たって読み方を理解するという「演繹的」な方法の方がよいでしょう。まさに「習うより慣れろ」ですが、このblogのような道しるべは必要だと思います。
・再読文字
・様々な ร の発音
・บ- は [bɔɔ-/ボー] と読むことがある
・一文字だけの単語の読み方
・ルール通りではなく、低声(第1声調)として発音する
・ルール通りではなく、母音の長短が変わる
・過去の関連記事
・今日のことわざ
STEP11 その他の発音
再読文字
一つの子音字を末子音として読んだ後、同じ子音字を頭子音として [-a] (厳密に言えば、声調がついて [-à][-á])をつけて、もう一度発音することがあります。
※この場合の軽声化(本来の声調どおりではなく、軽く平声(普通声調)で発音されること)については、blog021を参照。
(例)ผลไม้ [phŏn-lá-máai / ポンラマーイ] 「果物」
この場合、ล を末子音として [-n] と読んだ後、再び頭子音として [la] と発音します。声調はそれぞれの音節ごとで決まります。ล は低子音字・促音節短母音なので本来は [lá] ですが、軽声化によって実際には [la] と発音されます。また、ไม้ は本来は [mái] ですが、ここでは長母音化し、[máai] となります(母音の長短の変化については下の項目を参照)。
そのほかの例をあげておきます。
สกปรก [sòk-kà-pròk]「不潔な」
วิทยุ [wít-thá-yúʔ] 「ラジオ、無線」
พัฒนา [phát-thá-naa]「発展する」
様々な ร の発音
ร [rɔɔ] は、頭子音として [r-]、末子音として [-n] と発音する以外に、以下のように様々な発音をします。(a)と(b)についてはblog020で、(c)についてはblog022で、すでに説明しました。
(a) จร-、ซร-、ศร-、สร- のとき、ร は発音しない
(例)สร้าง [sâaŋ]「建設する」
(b) ทร =ซ [s] と発音する
(例)ทราบ [sâap]「知っている」
(c) おもに語尾におかれたとき、ร は発音しないことがある
(例)บัตร [bàt / バット]「カード」
上の(a)以外で、語中に発音しない ร が現れることがある
(例)สามารถ [săa-mâat / サーマート]「~できる」
これ以外にも、次のような発音をします。
(d) 子音字 + ร で、[-ɔɔn] と発音する
(例)
・พร [phɔɔn / ポーン] 「祝福」
・ละคร [lá-khɔɔn / ラコーン]「劇、芝居」
(e) รร と二字続くとき、
(e-1) -รร (後ろに音節が続かない場合)は [-an] と発音する
(例)
・กรรไกร [kan-krai / カンクライ] 「はさみ(鋏)」
・บรรจุ [ban-cùʔ / バンチュ]「詰め込む、入れる」
(e-2) -รร- (後ろに音節が続く場合)は [-a-] と発音する
(例)
・กรรม [kam / カム] 「業(ごう)」
・ธรรมดา [tham-má-daa / タムマダー]「普通の」…ม は再読文字として [-m-ma-] と読みます。
・ภรรยา [phan-rá-yaa / パンラヤー] 「妻」…後ろの ร は再読文字として [-n-ra-] と読みます。
บ- は [bɔɔ-/ボー] と読むことがある
บ [bɔɔ] は、頭子音として [b-] と発音する以外に、語頭ではしばしば [bɔɔ-/ボー] と読みます。けっこう重要な頻出語が多いので、覚えてしまいましょう。
(例)
・บดี [bɔɔdii / ボーディー]「主人、長」
この語を使った熟語はたくさんあります。
ประธานาธิบดี [pràthaanaathíbɔɔdii / プラターナーティボーディー]「大統領」
พฤหัสบดี [ph(a)rʉ́hàtsàbɔɔdii / プ(パ)ルハットサボーディー]「木星、木曜」
・บริการ [bɔɔríkaan / ボーリカーン]「サービス」
・บริษัท [bɔɔrísàt / ボーリサット]「会社」
あと2つの例のように、บริ- で始まる語はほとんど [bɔɔrí-] と読むようです。
一文字だけの単語の読み方
子音字一文字だけの単語が3語あります。
・ก็ [kɔ̂ʔ,kɔ̂ɔ / コー]「したがって、~も」
この単語は会話でもよく出てきます。本来の発音は [kɔ̂ʔ] ですが、会話ではふつう [kɔ̂ɔ] と発音します。
・ณ [náʔ / ナ]「(時間、場所)~において」
この単語は文語的ですが、やはりよく見る語です。
・บ่ [bɔ̀ɔ / ボー]「(否定詞)」
この単語は、東北タイやラオス、北タイで ไม่ のかわりに使われます。บ [bɔɔ] とも言います。
ルール通りではなく、低声(第1声調)として発音する
声調のルールに従えば、下声(第2声調)や高声(第3声調)になるはずですが、低声(第1声調)で発音する語があります。よく使う語が多いので、気をつけましょう。×をつけたのがルール通りの発音です。
(例)
・บัญญัติ [banyàt / バンヤット]「規定、規則」…×[banyát]
・บุรุษ [bùrùt / ブルット]「男性」…×[bùrút]
・ประมาท [pràmàat / プラマート]「軽視する、うっかりする」…×[pràmâat]
・ประโยค [pràyòok / プラヨーク]「文」…×[pràyôok]
・ประโยชน์ [pràyòot / プラヨート]「利益」…×[pràyôot]
・ประวัติ [pràwàt / プラワット]「歴史」…×[pràwát]
・ยโรป [yúròop / ユロープ]「ヨーロッパ」…×[yúrôop]
・ศักราช [sàkkàràat / サッカラート]「暦」…×[sàkkàrâat]
・อดิเรก [ʔàdìrèek / アディレーク]「特別の、趣味の」…×[ʔàdìrêek]
ルール通りではなく、母音の長短が変わる
母音符号と実際の発音が異なる単語です。これも頻出語が多いです。
(a) 母音符号は長母音だが、実際は短母音で発音する語
下声(第2声調)の単語に多いようです。
(例)
・ท่าน [thân / タン]「あなた」
・เล่น [lên / レン]「遊ぶ、演奏する」
・เส้น [sên / セン]「線」
(b) ๆ で繰り返す前半の語の母音符号が長母音であっても、実際は短母音で発音することが多い
ๆ (ไม้ยมก [mái yámók / マイ ヤモック])は、前の語を繰り返すことを示す記号です。(blog024を参照)
(例)
・ต่างๆ [tàŋ tàaŋ/ タンターン]「いろいろな」
・มากๆ [mâk maâk/ マクマーク]「たくさんの」
มากๆ は、最初の語の声調も変化して、[mák maâk] と言うことが多いです。
(c) 母音符号は短母音だが、実際は長母音で発音する語
(例)
・เก้า [kâau / カーウ]「9」
・เท้า [tháau / ターウ]「足」
以下は、強調して長母音になりやすい単語です。
・ได้ [dâi,dâai / ダイ、ダーイ]「~できる」
・เปล่า [plàu,plàau / プラウ、プラーウ]「いいえ」
(d) 母音符号は短母音だが、単独または熟語の後半に来ると長母音で発音する語
これは、高声(第3声調)の単語が多いようです。
(例)
・น้ำ [náam / ナーム]「水」
・ไม้ [máai / マーイ]「木」
・เช้า [cháau / チャーウ]「朝」
น้ำ を例に説明します。本来は[nám] ですが、
単独で使うとき……น้ำ [náam / ナーム]
熟語の後半に来るとき……แม่น้ำ [mɛ̂ɛ náam / メーナーム]「川」
のように長母音で発音するのがふつうです。一方、
熟語に前半に来るとき……น้ำแข็ง [nám khɛ̆ŋ/ ナムケン]「氷」
と、本来の短母音になります。
過去の関連記事
・タイ文字講座 STEP1 タイ文字のしくみ
・タイ文字講座 STEP2 子音字(1) ก ไก่ (コーカイ)
・タイ文字講座 STEP3 子音字(2) 発音編
・タイ文字講座 STEP4 母音符号
・タイ文字講座 STEP5 声調符号と声調
・タイ文字講座 STEP6 促音節と声調
・タイ文字講座 STEP7 子音字の連続(1) 二重子音
・タイ文字講座 STEP8 子音字の連続(2) 読まない字
・タイ文字講座 STEP9 子音字の連続(3) [-a] を入れて読む
・タイ文字講座 STEP10 読まない文字(まとめ編)
今日のことわざ
ล้วงคองูเห่า
[lúaŋ khɔɔ ŋuuhàu / ルアン コー グーハウ]
日本語訳:コブラの喉に手を入れて探る
前回、スワンナプーム空港の土地は、หนองงูเห่า [nɔ̆ɔŋŋuuhàu / ノーングーハウ]「コブラの沼地」と呼ばれていたと書きました。蛇もタイでは身近な生き物で、なんと200種類以上、毒のあるヤツもたくさん生息しているそうです。
コブラはタイ語で、งูเห่า [ŋuuhàu]。เห่า [hàu]は「吠える」という意味ですが、コブラは威嚇するときฟ่อๆ [fɔ̂ɔ fɔ̂ɔ]「フォーフォー」という音を立てるからこう言うそうです。
そんな毒蛇の喉に手を差し入れて何かを探そうというのですから、大胆不敵としか言いようがありません。この言い回しは、権威ある人から大胆不敵にも物を盗み取ること、だまし取ることを指しています。
[ 参考文献 ] 冨田竹二郎『タイ日辞典 改訂版』養徳社/ 赤木 功監修・野津幸治他『タイ語読解力養成講座』めこん、1999年/ シリラック・シリマーチャン、大滝ミナ子『タイ語のことわざ・慣用句』めこん、2018年